その9 自分のストーリーで勝負する

すべての信者はすでに世の光

イエス様がゲラサという町に行かれたとき、ある男から悪霊を追い出されました。一連の騒動の後に、男はイエス様のお伴をさせてほしいと頼みました。そのとき、イエス様は言われました。「家に帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったかを、話して聞かせなさい。」(ルカ8:39)

彼は故郷に戻り、自分の経験を分かち合いました。

「僕が墓場で裸になって暴れていたとき、イエスという方が来て悪霊を追い出してくれた。ほら、今は普通でしょ。あんなスゲーこと神様にしかできないっしょ!」

自分の身に起こったありのままを分かち合った結果、後日デカポリスから「大ぜいの群衆がイエスにつき従った。」(マタイ4:25)と記録されています。

世間の鼻つまみ者だった人が、ゲラサを含む十ほどの町から成る大きな地域に神の救いをもたらすために用いられました。

このように神様は、“回心直後の人”を喜んで用いてくださいます。すべての信者は、すでに「世界の光」(マタイ5:14)とされているのです。だから、その光を隠してしまってはなりません。

 

恵みの出口を作る

生まれた直後に目の前にあった、動いて声を出すものを親鳥だと覚え込んでしまうハイイロガンの雛の習性を、インプリンティング(刷り込み)と呼びます。

クリスチャンもまた往々にして、救われた直後に接した信仰者のモデルや教えが、その後の信仰生活の規範となりがちです。

「三つ子の魂百まで」と言いますが、霊的な赤子の場合は、「三日子の魂百まで」とでも言うべきでしょう。新生後48時間以内の正しい方向づけが明暗を分けます。

私の友人は、イエス様を受け入れた翌日に、自分を導いてくれた人に手伝ってもらって他の人に自分の救いの証をしました。そのとき、「こんなに楽しくて意義深い行為が世の中にあるのか」と思ったそうです。彼は今でも、毎日のように伝道しています。彼を通してどれだけ多くの人たちが新しい生命の道を見いだしたことでしょう。

回心者にとって大切なことは、恵みの出口を確保することです。

癒され、清められ、成熟し、聖霊に満たされないと伝道できないと教えると、回心者は受け身になり、与える喜びを経験するのが遅くなります。

癒しや清めや成熟は生涯かけて取り組むものなので、これを待っているとずっと出ていけなくなります。足の不自由な人にとって必要なのは、「自分の足でまっすぐな道を歩」(ヘブル12:13、新共同訳)くことです。多くの場合、「敬天愛人」を実践する過程で、段階的に癒しや清めや成熟がもたらされます。

同様に、「伝道の前にまず聖霊の満たしが必要だ」と言い過ぎると、内向的になります。むしろ、「全世界に出て行き、すべての造られた者に、福音を宣べ伝えなさい。」(マルコ16:15)という命令に従って出て行くと、「自分のうちから力が外に出て行ったことに気づ」(マルコ5:30)くようになるのです。

多様な伝道の仕方がありますが、その前提となるのは、派遣される神の心です。神は「だれを遣わそう。だれが、われわれのために行くだろう。」と語りかけてくださいます。そのときに、「ここに、私がおります。私を遣わしてください。」(イザヤ6:8)と答えるならば、神はその都度、誰にどのようにアプローチするかを教えてくださいます。

相手の立場に立ってよく話を聞き、ニーズを見分け、役に立てることがあれば具体的に助け、友人関係を築きます。神の導きを受け取りながら、喜んで人々に仕えてください。良い友だちになるためには、イエス様がサマリヤの女から水を飲ませてもらったように、相手に助けてもらうことも必要なことがあります。ノンクリスチャンの既存のリーダーの権威を尊重しながら、自分に与えられた資源をどのように未信者の共同体のために用いることができるか、と考えてください。

親しくなったら、大胆に祈ってあげましょう。神は未信者にご自身の力と愛を表わすために、いやしや奇跡を起こしてくださるでしょう。

自分と神との関係を表現することで、真理に渇いている人を見極めることができます。たとえば、「本当に僕は恵まれていると思うんだ。神様に愛されているからかなあ。」などいう言葉を、なるべく自然に口にします。どのように話すかも、神様が朝のデボーションのときに教えてくださることがあります。

 

90秒の証

親身に相手のことを思って仕える行為や、御名によってなされた奇跡や、神と自分との関係を表現する言葉に反応する人がいたら、どうすればよいでしょう。そのときは、あのゲラサ人のように自分のストーリーを話してください。

天外内トレーニングでは、回心直後の人が、その日から、隣人に自分の証をすることができるように訓練しています。「あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい。」(第1ペテロ3:15)と勧められているからです。

訓練のポイントは3つあります。第1に、「ビフォー・アフター」を明確に表現することです。回心前はどんな状態で、どのようにイエス様と出会い、その後どう変わったかを90秒で話すことができるように練習します。神の働きの大枠の構造を理解するためです。

第2に、聖書の言葉を1つ選びます。私の人生は、神が書かれた「キリストの手紙」(第2コリント3:3)です。経験を聖書に結びつけることで、「主を認め」(箴言3:6)ることができます。また、聞き手に御言葉の種を植え付けることができます。

第3に、自分の証を聞いた人々が父をあがめるようになるというイメージを持つことです。延々と苦労話をしてはなりません。「自分が求めたから見つけた」と言って、神の働きを自分の手柄にしてもなりません。証言する人の喜びが、聞き手の心に伝わっていくように、祈りながら話してください。

実際のトレーニングでは、二人組になり、相手を伝道相手に見立てて練習をします。ある所でセミナーをしたとき、午前中にトレーニングを受けた人が、昼食時に二人の青年を信仰告白まで導きました。失敗を恐れずに大胆にトライしてみてください。

「日本宣教は難しい」と多くの人が口にします。しかしイエス様は、「色づいて、刈り入れるばかりになっています。」(ヨハネ4:35)とおっしゃっています。あなたの証を待っている人がいるのです(使徒16:9-10、第2テモテ4:2参照)。それがライフスタイルの一部として定着するまで、証しし続けてください。

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