■ヨセフ – 自立の物語
創世記37~50章に収録されているヨセフ物語は、自立のステップを順序立てて描写したストーリーとして解釈することができます。当時17歳だったヨセフが、血縁の父であるヤコブと天の父である神によって、どのように自立を助けられたのかを辿ってまいりましょう。
自立のステップは5つあると思います。1)自尊意識の確立、2)目的達成の確信、3) 冒険に踏み出す勇気、4)自律的な限界設定、そして、5)試練を喜ぶ態度、です。
1)自尊意識の確立
ヨセフは12人兄弟の11番目で、父のヤコブが年老いてから生まれた子どもだったので、父にえこひいきされました。ヨセフの性格が天真爛漫だったからだと思いますが、父の偏愛の証である長袖の晴れ着を着て兄たちの前ではしゃいでしまいました。兄たちはその姿を見て妬みました。
しかし一方、自分が父のお気に入りだという感覚は、幼いヨセフに安定を与えたのだと考えられます。その証拠に、彼はその後2度も、自分が見た夢を兄弟たちや父母の前で話しました。彼の夢の内容は、彼が将来支配者になるというものだったのですが、すでに反感を買っていた兄たちの前で、臆面もなくその夢について話したところに、「自分は愛されている特別な存在だ」という意識の強さを伺い知ることができます。
愛されているので、どんなことが起こっても大丈夫だし、危険があっても逃れることができる。世界は基本的には安全な場所なんだ。多くの人の助力によって自分の求めることは これまでも実現してきたし、これからもきっとやりたいことを成し遂げることができる。 自分は安心して楽しく生きることが許されている。だから、試練にあってもなんとかなる。 変な人に出会うこともあるが、きっとそのうち信頼できる人とも出会うはずだ。自分を巡る環境は、ついには最善の方向に進む。なぜなら、自分は生きるに値する存在なのだから…。
成育過程でこのような自己イメージが形成された人は、物事を肯定的・積極的に捉えることができます。父であるヤコブは、ヨセフのありのままの姿を受け入れ、意志や感情を大事にし、ヨセフが何かを達成したときには一緒に喜び、自発的に行動して物事にチャレンジするようにと勧め、必要に応じて助けや励ましを与え、人生の楽しみを共有するなど、自尊意識が確立するためのアプローチをしたのだろうなと思います。