■タラント運用と会堂建築

2004年、私は初めて、融資を受けて中国で不動産を購入しました。当時、中国に派遣されている宣教師や宣教団体関係者に「中国で不動産を買うことで資金のヘッジができるし、将来不動産価格の高騰で多くの宣教団体は中国の大都市から撤退することになる」と話しましたが、私の話を理解した人はほとんどいませんでした。

私が最初に中国の不動産を購入した時、北京市内の不動産価格は、1平米あたりおおよそ5000元。市の最中心部でも6000元くらいでした。2004年の平均レートは1人民元=約12.5円でした。現在の北京市内の不動産価格はおおよそ35000元で、中心部の価格は約50000円です。

北京市の範囲は当時と現在とでは異なります。現在、10年前は北京ではなかった郊外も、北京行政区域に編入されています。10年前の北京市内の平均価格は、中心部の価格との乖離はそれほどありませんでしたが、現在は中心部の価格は市内の平均価格を大きく上回ります。

2015年2月16日現在の人民元の対円レートは、1人民元=19円です。

北京市中心部の80平米のマンションを購入する場合、2004年は80平米×6000元×12.5円=600万円現在は 80平米×50000元×19円=7600万円

12倍以上になっています。東京並みの価格です。

家賃も高騰しました。2004年は北京市内でも1〜2万円ほどで借りられましたが、今は10〜20万円出さなければ、安全な住まいは借りられなくなっています。残念ながら私の警告は現実となり、多くの宣教師が市の中心部から2時間も離れた郊外に移り住みました。そして、北京に住めなくなって出て行った宣教師も少なくありません。

宣教師や宣教団体の多くは支援者や協力者の献金に頼っているわけですから、貴重な資金を預けられていると理解します。特にインフレの激しい新興国の場合、通貨価値の目減りが顕著で、同じ活動を継続するための必要経費は年々増加していきます。献金の予算を年々増やしていくか、或いは活動を小さくしていくかのどちらかが必要になるのは火を見るより明らかです。

ですから、大切な資金を大切に運用する、という考え方や態度や責任が必要になります。しかし、多くの場合、「献金は自分のお金でないからその価値の保全を真剣に考えなくてもいい」という意識が見え隠れするのを私は感じていたのです。献金は、貴重な資金であるからこそ、その価値を保全し、最大限有効に使用するのが常識的な考え方ではないかと思うのは、私だけでしょうか?