■年功序列神話

 

城繁幸著「若者はなぜ3年で辞めるのか? – 年功序列が奪う日本の未来 -」(光文社) を読んだ。要約すると、下のようになる。

経済成長の時代に、均質で従順な労働者を大量に供給するために、企業内に年功序列制度というレールが敷かれた。

このシステムのおかげで、だれもが長い間安定して働くことができた。その結果、技術力が蓄積され、日本製品は世界の市場を席巻した。

サラリーマンは、世界一過酷な「丁稚奉公」をしても、後半に報酬とポストが保証されていたので、それに耐えることができた。

パイが増え続けていた右肩上がりの経済成長のときには、定期昇給もポストの提供も可能だった。しかし、成長が陰ると、ネズミ講が破綻するように、年功序列のシステムが破綻した。

新卒離職率が35%を超え、ニートやフリーターが急増し、メンタルトラブル発症率が増加している原因は、以前は盤石だったレールが、途中で切れていることがわかってきたからだ。

いつまでも安月給でこき使われる「飼い殺しの構図」が見えたとき、青年たちのモチベーションは消失してしまった。

組織内でそれなりの序列に上がった人々が、青年たちに、「若いうちは我慢して働け」と命令するのは、自分たちの取り分を守るためだ、と著者は言う。

上司を食わせるために、青年がクタクタになるという構造は、年金や財政赤字の問題と通底している。

著者は、青年たちに対して、そもそも何のために働くのか、と考えるべきだと提言する。破綻したレールにしがみつくことを止め、自分の頭で考えなさい、と。

この本を読んで、3つのことを考えた。まず第1に、僕自身が、「良い学校に行って、良い会社に入って、良い給料をもらう」という時代精神の影響を受けていること。

第2に、天下りをする公務員や、既得権益を守ろうとする経営者、それと結託する労組関係者、利己的な政治家たちに弁護の余地はないが、富や力や職業や公平に対する聖書的価値観を発信して来なかった教会にも責任がある。

第3に、青年たちの漂流の時代は、働き人が起こされる時代でもある。もし、彼らが渇いているなら、別の生き方に興味を示す可能性も高まるだろう。

 

マタイ9章35-39節
イエスは、すべての町や村を巡って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいを直された。また、群衆を見て、羊飼いのない羊のように弱り果てて倒れている彼らをかわいそうに思われた。そのとき、弟子たちに言われた。「収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。」