■虎の威を借る狐
中国の戦国時代の史書「戦国策」に、「虎の威を借る狐」という寓話がある。虎に捕まえられた狐が、虎に向かって言った。「天帝(天を主宰する神)が私を獣の長とされました。だから、私を食べると天帝の意に背くことになりますよ。」
戸惑う虎に、狐は言葉を継いだ。「嘘だと思うなら、私の後について来てください。どんな獣も私を見て逃げ出します。そうすると確かめられるでしょう。」虎は狐の言ったとおり、狐の後について歩いた。すると、獣たちはみな逃げ出した。
虎は、獣たちが、狐の後ろにいる自分を恐れて逃げたことに気付かなかった。この寓話は、本人はたいしたことはないのに、ほかの人の権力をかさに着て、威張る者の様子を表わしている。
この話のおもしろいところは、狐の機転よりも、むしろ虎の権威、さらには、天帝の権威が明示されている点である。「控え居ろう! この紋所が目に入らぬか」という宣言を聞いて、水戸のご老公にひれ伏す悪代官や越後屋の姿を彷彿とさせる。
狐の説明は、虎や周囲の獣をだますための虚構だが、私たちキリスト者は、事実として天帝の権威をいただいている。私たちに委任された権威は、福田首相の持つそれよりも、唯一の超大国と言われる米国の大統領の持つそれよりも大きな権威である。
権威を与えられた者は、自己証明のために権威を濫用すべきではない。権威は天帝のものでも、私はしもべに過ぎない。天帝に信頼され、天帝の御心を実行する仕事を任せていただいたことを光栄とし、喜びつつ謙遜に権威を行使するべきである。
ルカの福音書10章17-20節
さて、七十人が喜んで帰って来て、こう言った。「主よ。あなたの御名を使うと、悪霊どもでさえ、私たちに服従します。」イエスは言われた。「わたしが見ていると、サタンが、いなずまのように天から落ちました。確かに、わたしは、あなたがたに、蛇やさそりを踏 みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けたのです。だから、あなたがたに害を加えるものは何一つありません。だがしかし、悪霊どもがあなたがたに服従するからといって、喜んではなりません。ただあなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい。」