■キリスト直結(6)ダビデの幕屋
使徒の働き第15章のエルサレム会議は初代教会最大の会議でした。ユダヤ人のクリスチャンが集まって、イエスさまを信じた異邦人の信者たちに対して、割礼を含むユダヤの慣習を踏襲させるか、それとも、文化的な改宗要求は最小限にして、無割礼のまま「信仰によって救われた者たち」として受け入れるかを審議しました。
激しい議論があった後に、ペテロが意見を述べ、パウロとバルナバが宣教地における神の働きを証言しました。そして最後に、議長である「主の兄弟ヤコブ」が、アモス書9章11節の「その後、わたしは戻って来て、倒れたダビデの幕屋を建て直す。その破壊された所を建て直して、元どおりにする。それは、人々のうちの残った者や、わたしの名で呼ばれる異邦人が皆、主を求めるようになるためだ」という言葉を引用し、会議の結論としての公式見解を宣言しました。
ヤコブは、偶像を捨ててイスラエルの神を礼拝するようになった異邦人に、割礼を施したり、モーセの慣例を守るように要求したりしてはならないという採決を下しました。ユダヤ人は異邦人と一緒に、「キリストのからだである新しい共同体」を形成するものとなった、という歴史的な和解の宣言をしたのです。
アモスの預言をヤコブが引用したのは、終末における祝福回復の約束が、ユダヤ人クリスチャンによる異邦人クリスチャンの受け入れによってある程度成就し、さらに実現していくのだという彼の歴史観に依拠していると思われます。ユダヤ人が異邦人(アモスの預言ではエドム人)と平和を謳歌するというようなことは、神の介入なしには実現し得ないことで、人間的には想像すらできないことでした。