■地域開発試論(10) – 沖縄離島の事例

沖縄の北部に伊江島という離島があります。人口は約4700人。村の年間予算は70億円ほどですが、そのうちの25億円、つまり36パーセントほどが基地関係の収入です。オスプレイも配備されている島では、お金に困れば防衛庁に頼れば何とかなるという構図があるようです。

その上、何年も先まで、大型土木工事の計画が立てられています。そのため、たとえば、民宿は観光に力を入れる必要がありません。工事の職人でいつも満員御礼状態だからです。

ところが、島の基幹産業である農業はどうかと言うと、生産農家の収入は毎年減少し、お約束の「後継者不足」に悩んでいます。この島には高校がないため、高校に進学するためには子どもは中学卒業後に本島に移住しなければなりません。

高校進学のために島を出る現象を「十五の島立ち」と呼びます。島立ちして卒業後島に戻ってくる人たちは限られています。島では比較的大きな事業を継承するか公務員や農協職員になる以外に、家族を養うだけの収入を得る道を探すのは簡単なことではないからです。

「補助金ジャブジャブ」の現状を打開して、島が自立的に発展していくのは、これまでの経緯から見て、また既得権益を持つ人たちの動向を考えると、困難な課題ではありますが、このままではいつか金の切れ目が縁の切れ目ということになりかねません。たとえ、補助金はもらい続けることができたとしても、人口減少が進んで村が消滅する可能性もあります。

ところが、このような状況でも肯定的な要素がいくつかあります。その内の一つが、玉城堅徳というイノベーターの存在です。

氏の事業展開についてヒアリングしていくうちに、賀川豊彦が掲げた理想が、この離島の企業家の活動によって図らずも実現しているのではないかと思うようになりました。現在進行中の過疎の島の村おこしの取り組みから、地域開発の原則を学んでまいりましょう。