紀元1世紀の教会出席:7
その9 病気に関する議論
その後、私はもっと広いことがらに関する会話へと導かれました。
そのなかで尋ねられたのは、とても多くの奇跡が起こっているとされる東方のいやしの大神殿について、旅行中に話を聞いたことがあるかということでした。
「たくさん聞きました。けれども、ほとんどはこじつけだと思いました。聞かされたことを自分の目で見るなら、私は信じるでしょう」と、私は答えておきました。
それから、専門の医療的援助と共同体のいやしの祈りとの関係について、活発な会話が交わされました。
その問題に関してとても激しい感情を持つ人たちも何人かいて、一時は口論になるのではないかと思いました。
アクラのちょっとした助けにより、しばらくして話は落ち着きましたが、私にもあまりに込み入った話でした。
私は、アリストブーロスの奴隷が注いでいる一杯目のワインに注意を向けました。
杯は、私たちが使っていた皿と同じように陶器製で、上流家庭で見られるような銅製や銀製の食器ではありませんでした。
指で扱えない食事の残りもののためには、大きなスプーンがあてがわれました。
また、テーブルの上には、食前、食中、食後に手を洗い、指をきれいにするための水を入れた鉢とナプキンがありました。
こういった世話は、しばしば奴隷たちが、海綿やワインを使ってするものですが、ここでは自分でやることになっていました。
私たちは、ハエも自分で追い払わなければなりませんでした。
ワイン自体は、はちみつよりむしろ水が混合されており、なかなかの質のもので、口に心地よい冷たさでした。
子どもたちは、親たちと同じくらいの量を注いでくれるようにアリストブーロスの奴隷にせがみました。
「お願い、リュシアス」と、彼らは頼みました。
「分かりました」と、彼は答えましたが、彼らの求めに応じるふりをしただけでした。
病気に関する論議がおさまり、全員が最初の料理を食べ終えたところで、プリスカが席を立ちました。
前に彼女の手伝いをした人たちもついていきました。こうしている間に、ユーオディアが会話に割り込んできました。
「今週私は、フォルトゥナトゥスから手紙を受け取りました。皆さんによろしくとのことです」
どうやらフォルトゥナトゥスは、数カ月前に私の友人たちと共に短い時を過ごしたようでした。
そのときに、彼もまた集会に出席していました。
彼は今ミレトスに戻っており、その地の信者たちと深い関わりを持ちました。
そしてユーオディアは、彼の近況を伝えるその手紙の数節を読みました。
「私たちからも心からよろしくと言っていると伝えてください」と、アクラが言いました。
「そして、私たちは彼の祝福を祈り続けていると伝えてください」他の何人かもこれに同意しうなずきました。
しばらくしてプリスカが戻ってきたとき、私はもう自分の幸運を信じられませんでした。
最近ほとんど肉を食べていなかったので、少し肉を食べたいと思っていました。
肉は町中で慢性的に不足しており、一番景気がよいときでもおそろしく高価でした。
ところが、ここには各テーブルのために、いろいろな肉の大皿と各種野菜の大皿がありました。
今回の食事のために1週間蓄えておいたに違いないと思いました。
当惑しましたが、またもや私が最初に給仕されました。
私は小さな魚とかぶと豆を取り、おいしそうな香りの塩ソースをたっぷりかけました。
その10 洗礼を受けたテュロ
私の席の向かいでは、驚いたことに、アリストブーロスが自分の奴隷の皿に食べ物を盛ってあげているのが見えました。
単に盛っただけではなく、自分の皿に盛ったのとまったく同じ品数と量でした。
私は、自由民たちでさえ、彼らにまさる招待客より一段劣った食べ物とワインを、さらには異なる食器さえあてがわれるのを見るのにすっかり慣れきっていました。
奴隷たちは普通、食堂の外で食事をしました。
もっと寛大なやり方をする主人のことはときおり耳にしますが、まだ珍しいことです。
食べ始めた時のしばしの沈黙を利用して、アリストブーロスは、今晩のうちに皆に考えてもらいたい問題をリュシアスが持っていると言いました。
リュシアスが望むなら今それを進めてもよいと、アクラは手で合図しました。
リュシアスが話を始めようとした、ちょうどその時、外側の広間でサンダルの音がしました。
サンダルを脱いで、スリッパに履きかえるときの摩擦音です。
それから、一人の青年が戸口に現われました。
私たちのほとんどはひげをきれいに剃っていますが、彼はひげをはやしていました。
「ようこそ、フェリクス」と、アクラは、寝椅子から身ぶりをしながら言いました。
「主人が私を町向こうの野生がちょう狩りに遣わしたせいで、午後の全部を使ってしまいました」と、その奴隷は、遅れた理由をくどくどと弁解しました。
「そうでしょうとも」と、アクラは言いました。
「あなたが来る前に始めてしまってすみません。日が暮れてきたのであしからず」フェリクスは、まだ戸口でためらっていました。
「すみませんがアクラさん、もう一人分、夕食の用意がありますか」フェリクスが手招きすると、またもや、ひげをはやしたもっと若い男が、おそるおそる入ってきました。
「こちらはテュロです」と、フェリクスは続けました。
「私が前に話した友人です。私はこれまで何度も彼に、主について話をしてきました。ところが昨夜、町にいたあの説教者、アンドロニコスと彼が話をしていたとき、何度も聞いたことのある話が本当だと突然分かったのです。彼はただちにティベル川で洗礼を受けました(私はそれを思うとぞっとしました。ちょっと洗礼の内容を考えてみてください)。それから、彼は仕事が終わると私のところに飛んできて、自分に起こったことを話してくれました。きっと彼をここに連れてきてもかまわないだろうと思いまして……」
アクラは寝椅子から起き、ただちにその新来者のところへ行き、彼を抱きしめました。
「歓迎するどころの騒ぎではありません」アクラが続けました。
「大歓迎です。あちらにあなたの席を用意します。ちょっと狭いかもしれませんが、かまいませんね」
プリスカはもうすでに、台所から余分の食べ物を運んでくるところでした。彼らが席に着くと、「どうぞごゆっくり召し上がってください」と、彼女は言いました。
「のちほど、質問の時間が充分にあります。ここでは、あなたを他の人たちに紹介するにとどめます。どうぞ召し上がってください」
「さて、リュシアスさん。あなたが言おうとしたことを話してください」と、アクラは言いました。
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