■決して裏切らない

続いて86歳の恩人の話。

彼は学徒動員により徴兵され、満州に渡り、そこで終戦を迎える。冬には零下40度にもなる土地で、4年強、不条理な抑留生活を過ごすことになった。

過酷な労働と貧弱な食事。蛇や蛙や鼠を食べて飢えをしのいだそうだ。しかし、最も苦痛だったのは、飢えでも思想教育でもなく、ともに抑留されていた日本人からのいじめだっ た。

朝から晩まで赤化思想の話を聞かされたが、クリスチャンである彼は、頑として受け付けなかった。すると日本人からあからさまな脅しといじめを受けた。彼を日本に返さないという署名運動まで起こったそうだ。

昭和24年10月、ナホトカから舞鶴に帰る船に乗る前に、スターリンへの感謝状に署名するように強要された。署名しないと乗船できないと言われていたのに、彼はそれも拒絶した。結局乗船できて帰国することができたのだが、最後まで信仰を貫き通した。

何があっても従い通すという一徹さが、戦後のクリスチャンに欠けていることなのかもしれない。

 

箴言16章32節
自分の心を治める者は町を攻め取る者にまさる。