■「明日に架ける橋」という歌
先日、NHK で、「明日に架ける橋 – 賛美歌になった愛の歌」と題する番組が放映されていた。「明日に架ける橋」は、十代の頃に毎日のように口ずさんでいた歌なので、なつかしいメロディーに引き込まれて、ついつい最後まで見てしまった。
原題は、「Bridge Over Troubled Water」。作者のポール・サイモンは、ゴスペルの「Oh Mary Don’t You Weep」という曲の、「I’ll be a bridge over deep water if you trust my name」という歌詞からヒントを得て作ったそうだ。
記録的に大ヒットしたこの曲の「アレサ・フランクリン」が歌ったバージョンが、人種隔離政策下の南アフリカで紹介され、歌詞に共感する被差別民を、精神的に支えたという。歌が作者を離れて、独自の役割を果たすようになった事例だ。
そして、番組の終盤では、「明日に架ける橋」が、今や南アフリカで賛美歌として歌われているという事実が伝えられていた。ポール・サイモンがこの曲を発表した1970年に、36年後、地球の裏側で賛美歌として歌われることを想像しただろうか。
この歌が、こんなにも長い間、多くの人々に影響を与え続け、国家再生の1つのファクターにまでなったことを知って驚いた。そんなに大きな役割を果たしたものが、複雑な思想体系ではなく、人々がラジオを聴きながら口ずさんだ歌だったとは…。
「どんな苦難のときも、荒れた海に架かる橋のように、自分を投げ出して君を助けてあげる。」激しい差別に苦しみながら、真の慰め主である「十字架のイエス様」を、イメージしながら歌った人たちが多かったに違いない。
聖書の多くの部分は、もともと読み物ではなく歌として作られた。識字率の極めて高い社会で、活字に囲まれて生きている僕たちは、日常生活に根付いた「シンプルな歌」のもたらす変革の力を、見落としているのではないか、と思った。
エペソ5章19節
詩と賛美と霊の歌とをもって、互いに語り、主に向かって、心から歌い、また賛美しなさい。