■和解のエキササイズ(2)正直に話す・虚心に耳を傾ける
骨折したときに、痛み止めと湿布だけもらって、添え木やギプスをはめなかったらどうだろう。たとえ、苦痛は一時的に取り除かれても、根本的な解決には至らない。
添え木やギプスをはめると、身体の一部を固定するので、不自然な動きしかできなくなる。ところが、本当に不自然なのは骨折していることだ。
それと同じように、根本的な人間関係の回復のためには、不自然だと思えても、一時的にルールを作って、正しく働きかけたり、適切に応答したりすることを学ぶことが必要だ。
1つのルールは、私を主語とする「私メッセージ」で話すことだ。「あなたはなぜそういうことするかな」というように、「あなた」を主語にして話すと批判じみてしまう。
たとえば、「あなたは私のことをちっともわかろうとしてくれないよね」と言ったとする。これでは、反発を買うことはあっても、自分の気持ちは伝わらない。
しかし、これを「私メッセージ」で言い替えると、「あなたが疲れた様子で帰ってくると、話しかけるのも悪いような気がして、この頃私は寂しいよ」となる。
相手の行動が、自分にどういう影響を及ぼしたか、自分はどう感じるかということを伝えることで、提案型の話し方になり、相手もこちらの話を受け入れやすくなる。
もう1つのルールは、相手のペースに合わせてじっくり話を聞くことだ。「それはわかる…。でもね。」とすぐに切り返すなら、相手は受け入れられていると感じにくい。
「私メッセージ」で話す人は、自分の内面を描写しているのだから、聞き手は「それは違う」と言ってはならない。相手がそう思ったという事実をまず受け止めることだ。
3つ目のルールは、1人の人が話し終えると、それをファシリテーターが要約し、話し手も含めた参加者全員で内容を確認することだ。次の人が話すのは要約の後である。
ファシリテーターは、話を聞いている間に、話し手の本音が表現されていると思われるいくつかのキーワードを抽出し、それらを再構成して要約する。
ただし、そのときに、話の全体像は整理して言い換えても、キーワード自体は、話し手が話した通りの言葉で再現する方がよい。言葉を変えるとニュアンスも変わる。
「思っていることが皆に伝わった」と話し手が感じることが大切だ。だから、要約した後に、「そういうことでよかったですか」と本人に確認するとよい。
ファシリテーターは誘導したり、指導したりしてはならない。曇りのない鏡となるように心がける。「何を話しても受容される」という雰囲気作りが主な仕事となる。
ピリピ2章3節
何事でも自己中心や虚栄からすることなく、へりくだって、互いに人を自分よりもすぐれた者と思いなさい。