■Keep It Simple and Short (KISS)
預言者サムエルは民に言った。「あなたがたは、アモン人の王ナハシュがあなたがたに向かって来るのを見たとき、あなたがたの神、主があなたがたの王であるのに、『いや、王が私たちを治めなければならない。』と私に言った。」(第1サムエル12章12節)
神は民の訴えを聞き入れて、中央集権的な王制の創設を許されるのだが、それは大きな悪だった。王が率いる常設軍を持つことで、外国からの侵略を防ごうとすることは、イスラエルを守られる「王である神」を捨てることを意味したからだ。
王制は、民を奴隷にする搾取機構だと、サムエルは主張する。常設軍は見栄えは良いが、徴兵、徴税、賦役など、民の負担を強いることになる。また、集められたリソースが国防や福祉のためにではなく、むしろ王制自体の維持のために用いられる。
部族連合のシステムでは、平時には男たちは家族や共同体と過ごし、有事になると各部族から農民兵が招集され、時に応じて自衛軍を編成する。この「よりシンプルで柔軟なシステム」の方が、リソースが有効に用いられる。
王制の非効率性は明白ではあるが、王制だと神に従えない、というわけではない。ただ、王の資質への依存、王の偶像化の危険等の脆弱性をはらんでいる。サムエルも、民が王のゆえに泣き叫ぶようになる、と預言している(第1サムエル8章18節)。
一方、部族連合でありさえすれば、いつでも神に従えるというわけでもない。問題の根本はシステムではなく人間の忠誠である。しかし、神の前で結ばれた盟約に、各部族がコミットするという構造の中で、神の御旨と力が意識されやすいことは確かだ。
システムはシンプルな方が、組織の自己目的化という逸脱を避けやすい。日常生活に根付いた小さな共同体の中で、神の約束だけに信頼し、「王である神」だけを呼び求める人々が、神の王国の勝利にあずかることができるのだ。
ルカ12章2節
小さな群れよ。恐れることはありません。あなたがたの父である神は、喜んであなたがたに御国をお与えになるからです。