■地域開発試論(2) – 地域開発と起業家支援

以前、駅前再開発事業の話し合いに出たことがありますが、出席していた市の職員に対して威丈高に不満をぶつける関係者が多いのに驚きました。「お上」意識を持つ市職員がいるとして、その人たちに唯々諾々と従うというのは一方の極端ですが、いくら公務員が全体の奉仕者で公僕だとは言え、捲し立てるだけで物事が好転するとは思えません。

「市長は八方美人だ」とか、「公務員にとっては所詮他人事だからなあ」などとクレームをつける人は、「地域開発は役所が主導する」という前提で話しています。しかし、果たしてそうでしょうか。役所丸投げでは地域開発は進みません。その理由が、少なくとも3つあります。

第1に、行政には地域開発に関するノウハウが蓄積しにくい。

公務員は余程の失敗をしない限り、景気に関係なく前月とほぼ同等の給料を受け取ります。たとえ、地域の中小・零細企業が半分倒産しても、駅前の通りがシャッター商店街になっても、それで責任を問われることはありません。当時者意識を持ちにくいシステムの中で、コストダウンや専門知識・スキル習得の意欲を維持するのは容易ではありません。

また、定期異動が、革新的な発想を封印する原因となることがあります。意欲のある公務員が、施作を更新したり改善したりしようとしても、やっと新しい部署に慣れた頃に異動するというようなことはよくあります。それでは、責任をもって一貫した行動を取るのは困難です。結局冒険せずに、慣例通りの無難な線で、外部から専門家を招くことで対応しようということに落ち着いてしまいがちです。