■地域開発試論(3) – 下川町と真庭市

平成22年度過疎地域自立活性化優良事例に選ばれ、総務大臣賞を受賞した北海道の下川町が、2013年6月に某報道番組で紹介されました。循環型森林経営がうまくいき、地元の森林組合に就職しようとする若者が全国から集まっていて、順番を待っている人が30人もいるとのこと。実際に行って確かめることにしました。

ところが、訪問してわかったのは、残念なことに、元気なのは町役場の中だけでした。これで地域が稼ぐことができるのか、人口減少に歯止めがかかるのか、また、他地域のモデルとなり再生産していくか、という質問に対しては、少なくともインタビューをした3年前の状態では困難だと言わざるをえない状態でした。

「一の橋バイオビレッジ」と呼ばれている環境負荷低減型のコレクティブハウスを見学させていただいたとき、「このりっぱな施設はいくらぐらいかかったのですか。そのお金はどこから来たのですか」と対応してくれたスタッフに尋ねました。答えは数億円で、すべて助成金によるというものでした。

私は、バイオマスエネルギー自給システムを作っても、発電まで踏み込まなければ、真に自立的に町を経営することはできないと思ったので、さらに尋ねました。「発電しないと採算取れないですよね。」答えは、「はい。その通りです。」私が続けて、「それはどのようにして実現するのですか」と尋ねると、また次に助成金をもらうという答えでした。

親が運んでくれる餌を巣の中で口を開けて待っている雛鳥を連想してしまいました。持続可能な循環型森林経営で注目されても、町は相変わらず赤字を垂れ流しています。木質バイオマスボイラーを導入してコスト削減をしたと言っても、補助金なしでは町は存続できません。箸とかアロマオイルの生産という関連事業で生み出される雇用や収益は限られています。