■地域開発試論(6) – 田園回帰と「循環の経済」

世界でもっとも裕福な62人が持つ資産が、世界の半分の人口、つまり下位37億人の総資産に匹敵するという報告が今年発表されました。この62人という数字がわずか5年前には388人だったという事実が、急激な格差拡大の動きを明示しています<http://oxfam.jp/news/20160118_Davos%20Inequality_BriefingPaperJPN_FNL.pdf>。

世界の貧困の格差克服に取り組んで来たオックスファム・インターナショナルのウィニー・ビヤニマ事務局長は、「何百万人もの人々が食べることもできず、貧困に苦しむ世界で、最も裕福な人々にさらに資源と富が集積していくことが望ましいことなのでしょうか」と問いかけています。

イエスさまは野のゆりを指差し、「栄華を窮めたソロモンでさえ、このような花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。きょうあっても、あすは炉に投げ込まれる野の草さえ、神はこれほどに装ってくださるのだから、ましてあなたがたに、よくしてくださらないわけがありましょうか」(マタイ6:29-30)とおっしゃいました。

イエスさまの周りに集まった貧しい人たちは、父が着飾らせた方々でした。この箇所を読むとき、婚礼を控えた花嫁にドレスを送る花婿、または花嫁の父親の気持ちを想像します。「神のかたち」に造られた掛け替えのない一人ひとりが、「食べたり飲んだりし、自分の労苦に満足を見いだす」(伝道者2:24)ことを神は良しとされるのです。誰一人として、一部の富者に搾取されて衣食住に事欠くようなことあってはなりません。

わが国では、富裕層が徐々に拡大しているものの、英米のような極端な富の集中は見られません。とは言え、貧困層の拡大や中間層の衰退は深刻です。子どもの相対的貧困率は2012年に16.3%でした。子どもの6人に1人が標準的な生活水準の半分未満で生活しています。特に、一人親世帯の子どもの貧困率は51%とOECD加盟国中で最悪(2010年前後)の水準です。