■傾聴と要約的エコーと共感的表現

最近、ご子息がご自分の仕事を引き継ぐようになった男性経営者のSさんと食事をしながら懇談する機会がありました。彼は会社の創立者ですが、ご子息のKさんはまったく別領域の仕事をしてこられました。大きな会社の営業所を任されていたのですが、お父さまの会社が忙しくなったので、ご自分の仕事をやめて畑違いのSさんの会社で勤めるようになったという話でした。

そこまではよかったのですが、Sさんは、ご子息の態度が尊大なので、会議中に言い争いになることがあるとおっしゃっていました。「確かに息子なりに外で身につけたことがあるのはわかります。けれども、まずはここで学んでから意見を言うべきです。私がそれを指摘すると、『お父さんのやり方は古い』と言われてしまいます。」Sさんは、どうすればご子息と良い関係を築くことができるのかがわからず、思い悩んでおられました。

話を聞いていくと、ご子息のKさんが意見を述べ始めると、すぐに口をはさんで頭ごなしに「それは違う」と言って打ち消し、長い説教をしておられることがわかりました。私は、「長い説教をすることでKさんの行動が変わると思いますか?」とお尋ねしました。すると、「たぶん、煩い親父と思われているだけだと思う」とおっしゃいました。

私は三つのことを提案しました。第1に、ご子息の話を妨げずに最後まで聞くこと。第2に、ご子息の話を要約して伝えること。第3に、「そういう気持ちはわかる」というような共感的表現をしてから自分の意見を言うことです。そうは伝えたものの、Sさんには長い年月の間に習慣化してしまったコミュニケーションパターンがあり、一朝一夕では難しいと思いました。

それで、その場で練習することにしました。Sさんが奥様のために週に数回掃除機をかけるようになられた、という話を聞いていたので、そのことを題材にご子息と議論が始まったという例題を作りました。「Sさん、練習してみましょう。私がご子息のKさんの役をします。私の話を最後まで聞いて、まず話の要約をしてから、次に『その気持ちはわかる』と言い、その後に反論してください。」