■教会開拓の失敗学

数年前に、リーダーシップについて勉強しました。その頃のリーダーシップ学がどんな学問だったかというと、歴史の中で成功したリーダーや有名な人の特徴や方策を調べて、そういう人たちの共通点から学ぶことでした。しかし、最近では、成功したリーダーではなくて、失敗したリーダーや悪いリーダーを調べて、反面教師として学ぼうとするアプローチがたくさんあります。

教会開拓の分野でも同じ傾向がありました。以前教会開拓を教えていたときには、成功した教会を分析して、成功するためのいくつかのステップやプログラムを抽出しました。つまり、模範となるような教会を忠実に模倣しさえすれば、成功した教会を開拓することができる、と考えていたのです。

しかし、忠実に模倣しても教会が成長しないこともあります。模範となるような教会が成功した理由は様々なのですから、同じ事をしても、必ずしも同じ結果が出るとは限りません。環境、タイミング、文化など、いろいろ異なる要素があります。

だから今、私が教えている教会開拓講座では、成功しなかった教会開拓プロジェクトからも学んで、なぜ成功しなかったのか、もう一度やってみる機会が与えられたなら、以前とはどのように違う取り組みをするのかということも一緒に考えています。そうすれば、「ただまねをするだけ」より、成功や失敗の背景となっている原則を学ぶ事ができます。

一つの失敗した教会開拓者を紹介したいと思います。「ライフチャーチ(仮名)」は、タスマニア地方の都市部にある、メンバー200人ぐらいの賑やかな教会です。特に30歳代より若い中流層の青年たちが多く集まっています。また、ヒルソング教会の良い影響を受けています。どちらかというと、成功した教会開拓事業だということができるでしょう。

都市の中心部には教会が多いのですが、「バートン(仮名)」という郊外には教会があまりありません。バートンでは、都市との社会的格差があります。市営住宅に住んでいる労働者や失業者が多くて、貧困率も高いのです。