■福音は伝わっていますか(2) 日本文化の中にある接触点
・インサイダーが主体的に文化に根ざした行動を採用する
米国に留学していたとき、留学生寮に住んでいたのですが、廊下を歩いていると、韓国人の部屋がどこかを一目で見分けることができました。彼らは靴を扉の外で脱いで部屋に入るからです。日本人留学生も、部屋に入ると靴を脱いでスリッパに履き替えるのですが、靴は大抵、部屋の中の靴箱に入れるので、扉の外に出ていることはまずありません。
脱いだ靴を外に並べるか、靴箱に入れるか、部屋の中でも靴を脱がないかなどの違いは、単に個人レベルの行動様式に由来しているのではなく、集団が共有しているパターンによるものだと考えられます。このような行動の背後には、それぞれの集団に特徴的な「何が適正な行動なのかを判断するための思考の構造」、または「どう行動するかをガイドする共通の地図」のようなものがあります。このような、ある集団の行動の前提となる「ものの見方の体系」を世界観と呼びます(Kraft, 1889:19)。
世界観は、無意識のうちに組み込まれた仕組みなので、なぜそう行動するのかと改めて理由を聞かれても答えられないことが多いのです。それらの仮定は、事前の証明なしに真実だと見なされています。韓国人が扉の外で靴を脱ぐ理由を、「韓国は、高温多湿の日本と比べると、気候が乾燥している上、冬季には寒さが厳しいので、家屋の開口部が小さく玄関スペースも狭いので、靴を外で脱ぐ習慣が根付いた」と説明することは可能ではあります。しかし、人々は、特に理由について考えることなく、同じ行動パターンを繰り返します。