■福音は伝わっていますか(6) 異伝「眠れる森の美女」
・西洋人の「排除された中間層」
ポール・ヒーバートという宣教学者が、宗教システムを分析するための理論的枠組みを提示しました。その一部を簡単に説明いたします。彼は、世界観の領域について、「目に見えない、経験を超えた超自然の領域」を上層、「目に見える体験できる現実の領域」を下層、その間に位置する「この世にある超自然的領域」を中間層というように、三層に分類しました。
たとえば、聖書の宗教では、「近づくこともできない光の中に住まわれ、人間がだれひとり見ることのできない神」(第1テモテ6:16参照)を礼拝します。これは、上層に分類されることです。一方でイエスさまは、花や鳥や人や神殿を指差して真理を説明されました。これが下層の現実世界です。さらに、天使や悪霊、超自然的な癒しや預言、口寄せや呪いの言葉なども聖書には登場します。これが上層と下層の間に位置する中間層です。
では、インテリの西洋人の世界観はどうでしょうか。上層の現象については、いわゆる「宗教」が説明します。彼らの神は、見ることも触れることも感じることもできない、日常生活の彼方にいる方として描写されがちです。下層は「科学」が論理的に説明します。では、中間層はどうでしょうか。
ヒーバートは、西洋的な世界観は、この領域が排除されていると主張します。彼らの世界観の領域は二層しかなく、この世で展開される超自然的な活動や作用、つまり中間層の現象を理解したり説明したりする「パラダイム(=物事を理解する枠組み)」がありません。
このように、中間層が排除された世界観を持つ人たちは、聖なる霊が日常生活の中で、夢や幻や印象を通して人を具体的に導いてくださるということを当たり前のこととして受け取ることができません。概念としてはそういうことが存在すると理解できるのですが、いざ「日々神の声を聞きましょう」などとチャレンジすると、「神の声を聞くとはどういうことか?」と考え始めるのです。