■教えないで学習を助ける育成

紹介文
聞くに早く、語るにおそく、怒るにおそく対応するという真理を、身を以て示されたのはイエスさまご自身でした。エマオの途上で、イエスさまは、伝達よりも傾聴と共感を優先なさいました。また、弟子たちが感情を表出する機会を与えられました。そして、弟子たち自身が自ら真理を語り出すようになさいました。

使命感をもって自発的に行動する働き人を育てようと思うなら、教え込もうとしないで、よく聞き、よい質問をし、感情に共感して、弟子たちが自分で学習する機会を用意しなければなりません。


・ある管理職への進言

先日、ある中小企業の管理職(専務)から1時間半ほどお話をお聞きする機会がありました。その方は、私と会話している間に、ご自分で「社員同士が互いの言い分をよく聞いて、社内コミュニケーションを活性化する」ことが重要だとお気づきになり、その新しい知見を会社に帰ってから「しつこいぐらい部下に話すことにします」とおっしゃいました。それで、三つのことを簡単に進言しました。実際に交わした会話を思い出しながら再現してみます。

第1に、スタイルがメッセージを伝えます。伝える「メッセージ」と伝える「スタイル」が一致するときに、初めて部下に正しい内容が伝わります。もし、「よく聞く」という「メッセージ」を部下に伝えようとするなら、伝える側が「よく聞く」お手本を示さなければなりません。専務が話す時間を制限して、部下の声に耳を傾けるという、伝える「スタイル」を取る方がよいのです。