第1回日本ハウスチャーチカンファレンス:1「家の教会」から新しい伝道を
2008/6/6-8 @大阪
インタビュー:デビッド・リム氏
第1回日本ハウスチャーチカンファレンスに登場したデビッド・リム氏。アジアを代表する神学者の一人であり、ローザンヌ運動の東南アジアコーディネーターでもある。特にハウスチャーチの理念についての専門家であるリム氏に、ハウスチャーチの神学的・宣教学的な考察を聴いた。
プロフィール:【デビッド・リム】
1953年ネグロスオクシデンタル州(フィリピン)生まれ。神学者・宣教学者として英国等で教鞭を執る。2001年1月からはハウスチャーチの働きに焦点を置き、以降の記事や説教は、ハウスチャーチに基づいている。「なぜ地域教会は本当の教会成長を隠すのか」「電子世界の効果的クリスチャン」等の記事は、ブログ等でも読める。
――ハウスチャーチのコンセプト、定義や実践の最新状況について教えてください。
リム
ハウスチャーチとは、他の人を弟子化する過程です。少なくとも週に一回どこかで集まり、聖書に耳を傾けることが含まれます。聖書研究会とは違い、「聖書を通して神様が何を語っているか」に焦点を置きます。聖書の辞書も注解書も、専門家もいりません。最もシンプルな形です。無学な人でも、迫害下の中国の田舎やイスラム圏でも実践できます。
――先進国でもハウスチャーチによる宣教は効果的ですか?
リム
日本を弟子化するための唯一のやり方だと思います。伝統的なやり方では、巨額のお金を出して建物を購入し、献金の大半は、牧会スタッフの給料に使われます。すると日本社会から隔離された教会形成が行なわれます。
もちろん欧米からも多く学べますが、彼らは過去数世紀の間にたくさんの建物を建て、フルタイムのスタッフを雇いましたが、現在は空っぽになっています。ヨーロッパでは多くの教会が、イスラム教のモスクになり、アメリカでも教会が仏教に買われ、寺になっているのを見ます。現代のインターネット社会においては、宗教は疎外化されてくると思います。人間を人間たらしめるものは人間関係です。そして、ハウスチャーチの中心は人間関係です。クリスチャンがノンクリスチャンと友達になり、福音を語り、新生した人を弟子化します。
――ハウスチャーチの神学体系は完成していますか?
リム
私たちは、神が世を愛し、罪を贖ってくれたということをシンプルに信じています。残念ながらクリスチャンは、それを複雑なものにしてしまいました。神学的に、聖書が教えている大切な教義は4つしかありません。1)神様はこの世を創造された。しかし、人は罪のゆえに神から離された。2)救いの道を備えられた。3)それは救い主イエス・キリストである。4)聖書は神の言葉である。その他の教義は、不可欠ではないし、聖書内容をより明確に説明しているだけです。それらは、キリストの体に分裂を起こし、多くの教団を作り、教団のリーダーたちは話し合うことを好みません。ハウスチャーチは細かいことではなく、大切なことに目を向けていくことを願っています。
――色々な神学的背景を持った人がハウスチャーチの働きに従事しているという認識でよいですか?
リム
そうです。私は神学的な背景を持たない人が生まれてくることを願っています。大切なことは、イスラム教徒やニューエイジ、仏教徒などをキリストに導くことです。ハウスチャーチの伝道とは、イエス・キリストを紹介することです。聖書を教えて、文化的背景の中で適応することです。ドイツやアメリカ、日本の組織神学を教えることではありません。中国のハウスチャーチでは、異言を語りますが、アズサ通りのリバイバルの流れではなく、彼ら自身の神の言葉との出会いからきたものです。癒しや奇跡もありますが、チャールズ・フィニーやムーディー、ビリー・グラハムなど有名な伝道者の影響や流れを受け継いでいるのではありません。
――現在、世界各地で見られる地域変革(トランスフォーメーション)をどう捉えていますか?
リム
カリスマ派と福音派の双方の流れから起こっていると捉えています。カリスマ派では、奇跡や癒し、祈りを強調します。福音派では、地域の助けを強調します。メディアなどを使った教会の社会貢献もそうです。私は福音派に属しているので、フィリピンでは私たちの政治団体もありますし、経済的な援助をする団体もあります。
ハウスチャーチでも社会に関わることを強調しています。教会内のクリスチャン活動で多忙にならないように言っています。人が救われるときに、その人が仕事を辞めたり、抜けたりすることを勧めません。彼らがそこで輝くように教えます。マタイの福音書5章16節を読んでください。神の介入を強調するグループと実際的な活動を重視するグループの二つの角度からのトランスフォーメーションは、多くの場所で一緒になっています。
私たちの良い働きがあれば、それだけでもトランスフォーメーションは起きるでしょう。聖霊の働きは最初からあるわけですから、問題はクリスチャンたちが隣人を愛せていないことです。何もしていない言い訳のためにトランスフォーメーションの祈りを積んでいることも多くあります。私が思うには、トランスフォーメーションのための祈りに時間をかけすぎであり、実際に地域に出て行ってするべきことがあると知るべきです。イザヤ書58章から良い学びができます。
――リム氏は、《万人祭司》《使徒の働き》についての分野を長年研究されていますが、その動機が「なぜ普通の人が洗礼や聖餐式を行えないのか?」ということだったと聞きました。このことについて、少しお話をお聞きできますか?
リム
私は大学時代にハウスチャーチについて、基本的なことを学びました。大学のセルのリーダー、また他の4つの大学のクリスチャングループのリーダーもしていました。そこで私が神学校に行ったとき、「なぜ私たちが洗礼や聖餐式をできないのか」という疑問がありました。なぜなら、宗教改革では万人祭司が明確に打ち立てられていたからです。論文では、《新約聖書の教会論》について書きました。神学校で教えながら博士号論文を書きましたが、《パウロの書簡における教会のしもべとしての性質》を調べました。
私の結論は、教会がしもべになるには、シンプルになるということでした。シンプルになるには、小さくなることでした。私は中国人教会のユースグループでそれを実践していましたが、教団組織の中での制約もありました。ユースミニストリーが教会の成長以上に成長することがおかしいと、牧師や長老から反対を受けたのです。それをきっかけに、私は自分の召された働きをする必要を感じました。しかし、伝統的な教会とは手を切らないで進めるようにしました。今は、ハウスチャーチ増殖運動に焦点を絞っています。80年代から、メガチャーチにはセルが有効だと信じていましたが、それでも遅すぎると感じていました。多くの魂が失われていることを実感していたからです。パウロも使徒たちも、シンプルな方法で世界宣教をしていたと信じています。
誰かが他にもっと効果的な方法があることを知っていたら教えて欲しいと思いますが、10年、15年で世界宣教を完成させるには、ハウスチャーチしかないと信じています。
聴き手:桃井 亮
リバイバル新聞2008年6月29日号