■コミュニケーションのツール

あるカウンセラーによると、夫婦喧嘩の一番大きな理由は誤解です。相手が伝えたかったことを間違って受け取って、その間違って理解したことに反応して、話が合わない場合が非常に多いそうです。そういう誤解は時として深刻な結果をもたらします。

1889年、イタリアとエチオピアが条約を結びました。条約のひとつの項目は、エチオピアはイタリア大使館を通して外交ができるということでした。しかし、イタリア語の条約では、「エチオピアはイタリア大使館を通して外交しなければならない」と翻訳されてしまいました。それは、エチオピアがイタリアの植民地となることを意味しました。エチオピア皇帝はそんな簡単に独立国としての立場を放棄するつもりがなかったので、結局、戦争になりました。

夫婦や同僚の間の誤解はそれほどひどい結果にはならないと思います。それでも、自分が受け取ったことは相手が本当に伝えたかったことなのかどうかを「確認」することは大変重要です。まず相手に応答する前に、「今、◯◯◯と言ったのですね」と自分の言葉で相手が言ったことを繰り返したら、「いいえ、そういう意味ではなかった」と言えるチャンスを相手に与えることができます。正しく理解していたら、相手は「自分は理解されている」という安心感を持ちます。

私の家でよくある誤解を紹介しましょう。家内が「これとそれとあれを片づけてくれない?」と言うので私はそのとおりにしました。ところがなぜか家内は怒るのです。私は家内の言うとおり「これ」と「それ」と「あれ」の三つを片付けたのに。