■米国大統領選が映し出したキリスト教世界
追いつめられた米国(編集者注:この記事は、2016年の米国大統領を決める選挙戦の最中に執筆されたものです。)
今回の選挙は、どちらの候補者も望ましくない、と多くの人が嘆く。「これほど程度の低い大統領選挙はこれまでになかった」と。「残念ながら、どちらの候補者に投票するかではなく、どちらがいやなのかを基準に票が入れられるんだよ」というFacebookの投稿に「いいね!」で応答した人が何人もいた。
互いのスキャンダルを見つけては公開する指の差し合いが繰り返されているが、結局はどんぐりの背比べである。英語ではしきりに ”lesser of two evils” という言葉が言われている。それは、「二つの悪のうちでましな方を選ぶしかない」ということである。
米国は、かつては自由の象徴だった。少なくとも、そのような印象を世界に与えていた。けれども、こんなにも大多数の人々が、ためらいながらもまだましな方はどっちか考えて投票しなければならないということは、米国のかつての姿はもう崩れてしまっていると言えるのではないだろうか。これまで掲げていた、「自由、民主主義」などのモットーは、もはや米国人の口から聞いても説得力がない。