■福音は伝わっていますか(13) 神の国の福音

紹介文
神の国の民は、全被造物をキリストと共に統治し、共同管理するというミッションを与えられています。その内容は、第1に、「耕す」こと。つまり、被造物の潜在能力や可能性や特徴が最大限に発揮されるために仕えること。第2に、「守る」こと、つまり、人間も自然も持続可能な共生の道を創造的に模索することです。

キリストが父から派遣されたように、弟子たちも「ほかの町々に」神の支配をもたらすために遣わされていきます。「町々」という言葉は、地理上の諸地域だけでなく、政治、経済、行政、教育、メディア、医療、文化活動などの多様な領域を象徴するものと考えられます。神の国の民が御心に従って、人々に、そして被造物全体に仕えるときに、それらの領域が天国のように変えられていくのです。


・キリスト者の社会的責任

回心前の私のニーズは、死の恐怖を克服することでした。小学校1年生のとき、幼稚園のときからずっと同じクラスで仲が良かった同級生が交通事故で死にました。6歳の私は、クラス代表として弔辞を読んだのですが、そのときの言葉や声のトーンを今でも覚えています。突然友人を襲った死が、いつ自分に訪れるかわからないという実感があり、死んだ後どうなるかわからないと思うと身がすくみ、恐怖に苛まれる日々が10代後半まで続きました。

そのため、イエスさまと出会ったときには心から安心しました。また、神の愛を知ることで、死の恐れからだけでなく孤独からも解放されました。罪が赦されて神の子とされただけでなく、罪の力に打ち勝ってキリストに似る者とされていくこと、死んだ後には栄光の復活の体をいただくことも次第に理解するようになっていきました。

その後、キリスト者は永遠の生命を宣べ伝えるだけではなく、社会的責任を果たすべきだという論を、書籍や先生たちや友人たちから学ぶようになりました。たとえば、毎日の食べ物にもこと欠いているような人たちに、「安心して行きなさい。暖かになり、十分に食べなさい」(ヤコブ2:16)と言い、すぐ続けて「ところで、永遠の生命がほしいと思いませんか」と言って伝道を始めるのはどうでしょうか。それは相手を無視した、あまりにも身勝手な振る舞いではないでしょうか。