2週間ほど前に、「テクノロジーが権力に 仏経済学者ジャック・アタリ氏コロナと世界(1)<https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57830630Y0A400C2MM8000/>」という記事が出ました。ジャック・アタリといえば、ミッテラン大統領の特別顧問や欧州復興開発銀行の初代総裁を歴任し、その後、現在のマクロン大統領に至るまで、フランスの歴代大統領に直接的な影響を与えてきた「世界の知性」と称される人です。
以下、アタリの記事に対する私のフィードバックを3項目にまとめました。
1)霊とこころとからだの健康
アタリは、新型コロナの危機が示したのは、命を守る分野の経済価値の高さだと述べました。「健康、食品、衛生、デジタル、物流、クリーンエネルギー、教育、文化、研究などが該当する。これらを合計すると、各国の国内総生産(GDP)の5~6割を占めるが、危機を機に割合を高めるべきだ」と。
彼が、真っ先に上げているのは、健康・食品・衛生ですが、アフターコロナのビジネスは、「免疫力をどう高めるか」という課題を解決する職種が価値を高めると私も考えています。日本には、古来より清酒、味噌、醤油、鰹節など、麹菌などの微生物を発酵製造に利用した健康食品の歴史があります。今後、この分野の商品やサービスは、ますます注目されるでしょう。
また、霊とこころとからだが有機的に結びついているという包括的な聖書の人間観は、日本人の世界観とも親和性が高いと思われます。「霊」については、天命に従って生きる神の民の生き様を通して証ししたり、説明口調にならないで直感に働きかけるアプローチによって、霊的世界について紹介することができるかもしれないなあと思っています。また、歩いて旅をすること、そこで自然や人と触れ合う行為が、神の世界とも、人間の身体性とも直結しているという「奥の細道」のテーマは、日本人が再発見すべき真理であるとともに、ますます分断化していく世界に対する警告ともなり得ます。
2)テクノロジーをどう使うか
人類史的にみて新型コロナはどんな意味を持つか、という問いに対して、アタリは権力の変容が起こると答えました。「新型コロナの対策ではテクノロジーが力を持っている。問題はテクノロジーを全体主義の道具とするか、利他的かつ他者と共感する手段とすべきかだ。私が答える『明日の民主主義』は後者だ。」
全体主義の国家や民間のデジタル関連会社が、人々の行動を管理しようとするのを見るときに、私は黙示録の獣の刻印のことを想起するのです。「小さい者にも、大きい者にも、富んでいる者にも、貧しい者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々にその右の手かその額かに、刻印を受けさせた。また、その刻印、すなわち、あの獣の名、またはその名の数字を持っている者以外は、だれも、買うことも、売ることもできないようにした。」
テクノロジーは、正しい哲学に基づいて使われないと、神に造られた人間の自由を奪い、人権を損なう結果をもたらしてしまいます。アタリの場合は、民主主義の道具とすべきだと主張していますが、テクノロジーの背後に据えられるべき聖書的な思想、つまり「神の像に造られた人間に対する敬意」について伝えるのは、日本の神の民の役割でもあると思っています。
3)日本の結束、知力、技術力、慎重さ
日本はどう危機から脱するかという問いに、アタリは「日本は危機対応に必要な要素、すなわち国の結束、知力、技術力、慎重さを全て持った国だ。島国で出入国を管理しやすく、対応も他国に比べると容易だ。危機が終わったとき日本は国力を高めているだろう」と答えました。
「世界の知性」から、そこまで評価されていることに驚くとともに、確かに神が日本に与えてくださった資源が、神の御心に従って、利他的かつ他者と共感するために使われ、世界の祝福となるようにと祈る必要があると思いました。
それにしても、日本の特性としてアタリが挙げた「結束、知力、技術力、慎重さ」は、経済価値が高められる9つの業種の最後の三つ、つまり、「教育、文化、研究」と強く関連しています。日本文化に内包する徳目が、この時代で極められ、次世代に持続的に継承されていくべきです。
アタリの功績は多岐にわたりますが、オランド大統領の時代だけでも、彼と仲間たちが書いた報告書は、44もの経済改革を提案しました。日本でも神の民を中心に構成されるアタリ委員会のようなシンクタンクが、「産官学金労言士」たちに有益で愛に満ちた助言をするようになるとき、アフターコロナの時代に神が高めてくださるであろう日本の国力を、世界の幸福のために用いることができるのだと思いました。
福田充男
【RAC通信】 – 2020.05.05