■ルカの記した荒野の誘惑

荒野の誘惑(ルカ4:1-13)は三つの共観福音書のすべてに取り上げられていますが、ルカだけが、イエスさまの受洗と荒野の誘惑の間に、アダムに至るイエスさまの系図(ルカ3:23-38)を挿入しています。これは、ルカがこのエピソードのことを、「イエスさまがアダムの失敗を取り返す出来事」だと位置付けているからだと考えられます。

ユダヤ人を主な読者と想定して書かれたマタイの並行箇所では、ユダヤ人の祖先であるアブラハムまでしか系図が辿られていないのと対照的です。

イエスさまがアダムの失敗をどのように挽回されたかという視点で、「荒野の誘惑」の記事を解釈してみましょう。

・「証明してみろ」と迫る同種の誘惑

エバが蛇から誘惑を受けたときのことです。蛇はエバに、「あなたがたがそれを食べるその時、あなたがたの目が開け、あなたがたが神のようになり、善悪を知るようになることを神は知っているのです」(創世記3:5)と言いました。