■目標に向かって前進する

紹介文
一年の終わりが近づくと、新年の抱負や今年の目標といった年始に立てた目標をふり返る機会がある。目標を立てること、その目標を達成することについて、神の国の視点から考えてみたい


年の瀬も近づくと、その年をふり返る機会が増える。一年の間に起こった出来事、流行した言葉、人気の出た商品などについて様々なメディアで取り上げられることが多くなる。2019年の今年は、変化の年であった。特筆すべきは、新しい元号「令和」へ変わったことだ。まだ一年も経っていないのに、「平成」と聞くとどこか懐かしいような響きさえする。消費税率も10%に上がった。

来年の東京オリンピック・パラリンピック2020を前に、様々なスポーツの世界大会が日本国内で開催された。そのような中、ラグビーのワールドカップでは、日本代表が大活躍した。そこから「ONE TEAM」などの流行語も生まれた。その他さまざまなスポーツで個人、団体を問わず日本代表が活躍した。

喜ばしい出来事だけの一年ではない。関東以北の東日本では、度重なる台風が多大な被害をもたらした。自然災害ばかりではなく、多くの人が犠牲になる悲惨な事件も起こった。このように、一年という期間に私たちの世界で何が起こったかを考えると、思いは自然に自分自身の歩みをふり返るようになる。

スタートはどのようだっただろうか? 2019年の一月、まだ「平成最後の~」とのフレーズが、そこかしこで聞かれていた。2019年を始めるにあたって、あなたは何を期待し、願っていただろう。新年の抱負や年間目標などを掲げる習慣を持つ人もいるだろう。テーマとなるような聖書箇所を指標聖句として掲げた人もいるかもしれない。それらの願いや決意は、一年経ってどのようになっただろう。未だ2019年は終わったわけではないから、早計だろうか。

年始に目標を設定しない人もいるかもしれない。仕事や学校などで目標設定する以外に、自分自身の生活や人生について何の目標も立てないという人もいるだろうか。とは言え、目標設定について、あれこれ考えてみたい。

キリスト者にとっての目標

目標を立てるということは、キリスト者にとってどのような意味を持つのだろう。「私は決勝点がどこかわからないような走り方はしていません」(第1コリント9:26)と告白して、自分の人生を「競技場で走る人たち」(第1コリント9:24)になぞらえて、決勝点すなわちゴール(目標)を目指して走っているのだ、とパウロは自分自身の生き方について告白している。

パウロはピリピにいるキリスト者に対しても、「うしろのものを忘れ、ひたむきに前のものに向かって進み、キリスト・イエスにおいて上に召してくださる神の栄冠を得るために、目標を目ざして一心に走っている」(ピリピ3:13-14)と告白した上で、「ですから、成人である者はみな、このような考え方をしましょう」(ピリピ3:15)とキリスト者が自分に倣う生き方をするように勧めている。

ここでパウロが言っている目標とは、「自分の救いの達成」(ピリピ2:12)である。そして、パウロ自身が「私は、キリストとその復活の力を知り、またキリストの苦しみにあずかることも知って、キリストの死と同じ状態になり、どうにかして、死者の復活に達したい」(ピリピ3:10)と願っているように、生涯を全うして「神の栄冠」を受けて永遠の御国に神さまとともに住むことである

パウロだけがそのような目標を持つのではなく、キリスト者全てがそのような考え方をするように、「もし、あなたがたがどこかでこれと違った考え方をしているなら、神はそのこともあなたがたに明らかにしてくださいます」(ピリピ3:15)と言って、神さまご自身がそのような目標を私たちが持つように導いてくださると告白している。

改めて言うまでもなく、キリスト者にとっての究極的な目標とは、この地上での生涯を主のみこころにしたがって生き抜き、天の御国において「栄冠」を頂いて、永遠に神さまと共に生きることである。ある意味、目標はすでに神さまによって設定されていると言ってもいい。人生の究極的目標に向かって生きることを、神さまは私たちに望んでおられる。

だから、いつか「お迎え」が来るまで、じっと「天国行きのチケット」を守りながら、待っているような生き方は、神さまが望み、パウロが模範を示したような「目標を目ざして一心に走っている」という生き方とは全く異なる。波間に揺れ浮かぶ落ち葉のように、流されるままに、全てを受け入れて生きてさえいれば良いという生き方を神さまはお望みではない。同時に「走っている」とパウロが表現したのは、なにも「生き急いで」いたのでもなければ、絶えず忙しく活動していたということでもないだろう。パウロは何度も「牢につながれている」(コロサイ4:18)状態にあって活動に制限を加えられていたのだから。パウロは、目標を見失うことなく、あきらめることもなく、そこに到達することを心から願い続ける、そのような姿勢を表現していると考えられる。

目標の性格

人生の究極的目標について、読者のみなさんの中に異論はないと思う。それでは、短い期間に立てる目標や、生活の限られた範囲における目標についてはどうだろう。まず、目標がどのような性格を持っているかを考えてみたい。「目標の性格」などと聞くとやたら難しく感じられるかもしれないので、「来年のゴールデンウィークに家族とハワイへ行く」という目標を例にいくつか性格を取り上げてみよう。

まず目標とは未だに起こっていない、将来についてのことであるという事実に注目したい。「昨年のゴールデンウィークに家族とハワイへ行った」というのは、目標ではない。過去の出来事だ。これから起こりうる、達成し得ることが目標なのだ。「今日中にあれこれをする」といった短い期間の目標であってもそれは同じだ。これから達成し得る将来の事柄であるとすると、目標は現在とは異なる状態のことであるとも言える。この目標を掲げた時がいつであったとしても、「来年のゴールデンウィーク」ということは、現在と異なる時のことである。「ハワイに行く」というのだから、現在は「ハワイ」にいるのではなく、異なる場所にいるのである。

「神の栄冠」を受けることにも同じことが言える。まだ、栄冠を受け取っていないことが前提だ。このように、目標は現在と未来の間にある「ギャップ」を明らかにする。それは時間であるし、場所であるかもしれない、または関係のことや所有についてのことかもしれない。

次に目標は行動を促す、という点について考えたい。「来年のゴールデンウィークに家族とハワイへ行く」とことを目標にした途端に、様々な行動が思い浮かんでくる。完全にその全ての行動が明らかになるわけではないが、私たちを何らかの行動へと促す。

たとえば、来年のスケジュール帳に書き込む、フライトの時間や値段を調べる、宿泊先を調べる、家族と計画を立てる、ハワイを紹介するサイトを調べるなど、現時点から「来年のゴールデンウィーク」までの時間に、何かの行動を起こすことに思いが行く。目標を設定したから、後は「果報は寝て待て」とばかりに、何もしなくて良いと最初から考える人はいないだろう

加えて、目標はより小さな目標によって達成される、という性質に目を留めたい。「家族とハワイへ行く」ためには、さまざまな行動が必要になる。航空チケットを人数分購入しておかなければならない。有効期限内のパスポートも必要だ。ビザ無し滞在をするために事前にESTA申請をしておかなければ飛行機に乗れない。直前に荷造りも必要だし、飛行機の出発時間に間に合うよう空港でチェックインを済ませることも必要だ。

実際の渡航に関わることだけではない。「ハワイへ行く」ための「行動の結果」が全て組み合わされて、目標が達成されるのである。そして「行動の結果」とは、行動を起こす前の「より小さな目標」と言いかえることもできる。つまり、「より小さな目標」によって、目標は出来上がっているのだ。「階層構造」を持っていると言っていいかもしれない。

このような性質を念頭に置くと、「小さい事に忠実な人は、大きい事にも忠実であり、小さい事に不忠実な人は、大きい事にも不忠実です」(ルカ16:10)という聖書の言葉が違うイメージで浮かび上がってこないだろうか。小さい事と大きな事という全く関係のない二つの事があるのではなく、大きい事が小さい事々によって成り立ち、それゆえ小さい事に忠実であることが、大きな事への忠実さに直結するというイメージだ。

こう考えると、小さな事への忠実さは、大きな事への忠実さであるとも言える。「千里の道も一歩から」と言われるとおりでもある。これは、最初の一歩の大切さを意味するだけではなく、千里の道のりは一歩一歩から出来上がっているという事実をも示しているのだ

目標設定と達成のヒント

それでは、どのように目標を立てれば、目標達成を目ざして前進することができるだろう。目標設定のためによく知られているのが、「SMART」と呼ばれる目標を設定する方法だ。英単語の「SMART(スマート)」は、「格好の良い」ことを意味していると思われているが、本来の意味は「賢い」である。つまり、「SMART」による目標設定は、「賢い」目標設定の方法であるという意味が込められている。

「SMART」は、目標設定における5つのポイントの頭文字を並べたものだ。S=Specific(具体的)、M=Measurable(測定可能)、A=Achievable(達成可能)、R=Relevant(関連性のある)、T=Timebound(期限のある)の5つが含まれた目標を立てようという方法だ。

目標が1)「具体的」で、2)達成できたのかできないのか、どの程度まで達成したのかを「測定可能」であって、3)「火星に移住する」という現在不可能なものではなくて「達成可能」なものであり、4)自分の人生や使命に「関連性」を持った、5)「期限のある」ものになるように設定するのだ。詳しく知りたい人は、「SMART目標」でインターネットを検索してほしい。

他にも、いくつかヒントになることを羅列してみたい。まずは目標を書き出すことの大切さだ。ある調査によると、「何らかの目標を持っているか」という設問に対して、ほとんど全ての人が「はい」と答えているのにも関わらず、「はい」と答えた人の20%しか、「目標を書き出していない」という。しかし、目標を書きだしたとき、その達成率は32%になるのだそうだ。書き出されていない目標は、目標を立てたことさえ忘れてしまうため、達成されることはほとんどない。

書き出しただけでも32%の達成率になるというのだから、目標を定めるときには、何はなくとも目標を書き出そう。「幻を板の上に書いて確認せよ」(ハバクク2:2)とも言われている。

次に、書いた目標を誰かと分かち合うことをお勧めする。先の調査には続きがあって、立てた目標を誰かに話した場合、その目標の達成率は62%にまで上昇するという。書き出して誰かに話すことで、目標の達成率がここまで上がるのなら、話さないという手はない。

分かち合う相手は、自分の人生とは全く関係のないアカの他人でない方が良い。家族、友人に声をかけてお互いに分かち合うのはどうだろう。「約束された方は真実な方ですから、私たちは動揺しないで、しっかりと希望を告白しようではありませんか。また、互いに勧め合って、愛と善行を促すように注意し合おうではありませんか」(ヘブル10:23-24)と促されている。神さまの約束に裏付けされた希望に満ちた目標を立てよう。そして、書き出して、分かち合いたい。

そして、目標を書き出したら、一回だけ誰かに話して終わりにしてしまわないことが肝心だ。先の調査によると、書き出して誰かに話した目標を、定期的にチェックするならば、その達成率はなんと76%にまで引き上げられるそうだ。どうだろう、立てた目標の四分の三が達成されると思えば、定期的に見直したくならないだろうか。

一年の終わりにこれまでを振り返りながら、来年以降の新たな目標を立て始めよう。

TAKESHI

RAC通信プラス】 – 2019.12.10号…【有料版】第214号TAKESHI